認知症の薬について家族が知っておきたいこと|元支援専門員が解説

介護の知恵
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この記事でわかること

  • 認知症治療薬の2つの種類と主な薬剤名
  • 周辺症状(BPSD)に使われる薬と注意点
  • 介護家族が薬の知識を持つことの意味

この記事は、介護保険と障がい福祉の相談業務に30年携わった元支援専門員が、実務経験をもとに解説しています。

認知症の薬には、どんな種類がありますか?

認知症の治療に用いられる薬は、大きく2種類に分けられます。

  1. 認知機能を改善する薬(進行を遅らせる)
  2. 周辺症状(BPSD)を抑える薬(興奮・幻覚・うつなどの症状を緩和する)

    中核症状と周辺症状(BPSD)の違い 記憶障害・失語・失行・失認・見当識障害などを中核症状といいます。一方、**周辺症状(BPSD)**とは、国際老年精神医学会の定義によると「認知症患者にしばしば生じる、知覚・認識・思考内容・気分・行動の障害による症状」のことで、興奮・暴力・幻覚・うつ・徘徊などが含まれます。問題行動ととらえられる場合もあります。

それぞれについて、主な薬剤とその目的を紹介します。


認知機能を改善する薬(進行を遅らせる)

薬剤名目的・作用適応症
ドネペジル(アリセプト)記憶や学習に関わるアセチルコリンを増やし、認知機能を維持・改善するアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症
ガランタミン(レミニール)アセチルコリンを増やし受容体を活性化することで記憶力を高める軽度~中等度のアルツハイマー型認知症
リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロンパッチ)アセチルコリン分解の酵素を阻害し、神経伝達を改善を図る軽度~中等度のアルツハイマー型認知症
メマンチン(メマリー)
神経細胞を過剰な刺激から保護し、思考の混乱を抑えます中等度~重度のアルツハイマー型認知症

💡 症状の重さで薬が変わります

  • 軽度~中等度 → 「アセチルコリンを増やす薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)」
  • 中等度~重度 → 「神経細胞を守るメマンチン」
  • レビー小体型認知症にはコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル)が適応。

周辺症状(BPSD)を抑える薬

症状薬剤名目的・作用
興奮・暴力・攻撃性リスペリドン(リスパダール)、クエチアピン(セロクエル)、アリピプラゾール(エビリファイ)精神の安定、攻撃性の抑制(抗精神病薬)
幻覚・妄想リスペリドン、クエチアピン幻覚や妄想を抑える(抗精神病薬)
うつ症状・不安パロキセチン(パキシル)、ミルタザピン(リフレックス)気分の落ち込みや不安を軽減(抗うつ薬)
不眠トラゾドン(デジレル)、ラメルテオン(ロゼレム)眠りの質を改善(睡眠導入剤)
徘徊・興奮抗精神病薬(リスペリドンなど)や漢方薬(抑肝散)落ち着かせる

💡 BPSDの対応で大切なこと

  • BPSD(行動・心理症状)は 環境調整やリハビリ も重要になります。
  • 抗精神病薬 は副作用(転倒・ふらつき)に十分な注意が必要です。
  • 抑肝散(漢方薬) も興奮や幻覚に効果が期待され、副作用が比較的少ない選択肢として注目されています

介護家族が薬の知識を持つことは、なぜ大切ですか?

専門医や支援者に相談しながら介護を行うとき、家族自身が薬についての基本的な知識を持っているかどうかは、介護の質に大きく関わります。

たとえば、症状が変化したとき「これはどの薬の副作用かもしれない」と気づけるかどうか。あるいは、診察の場で医師に的確に伝えられるかどうか。そういった場面で知識の有無が差を生みます。一方で、毎日の介護に疲弊していると、相談と愚痴の境目がわからなくなってくることもあります。医師に「大変です」と繰り返し訴えることで、善意から薬を増やされてしまうケースも少なくありません。高齢者にとって薬の副作用は深刻なリスクになり得るため、正しい知識を持って医師と付き合うことがとても重要です。

👉この点については、以下の記事で詳しく解説しています。


まとめ|認知症の薬と介護のポイント

  • 認知機能の改善 には 「アセチルコリンを増やす薬」や 「神経を保護する薬」が使用されます。
    注釈アセチルコリンとは中枢神経系などの神経伝達に関わる神経伝達物質で、脳では主に頭頂葉や小脳で作用します。私たちの体内で、主に神経細胞間の情報伝達を担う『神経伝達物質』として大事な役割を果たしています。
  • 周辺症状(BPSD) には 「抗精神病薬」「抗うつ薬」「漢方薬」などが使用されます。
  • 認知症の治療は 薬だけでなく、生活環境の調整やリハビリなども重要な柱です。
  • いずれも、専門医の指示に従った適正な治療が前提です

周辺症状は一つの症状だけでなく、幾重にも問題行動が重なる場合などが考えられるため、介護者(家族)は一人で抱え込まず、医師や身近な支援者に相談の上、最良の方法で介護負担の軽減を図りましょう。認知症の症状は急激に、あるいは少しずつ動いて変化していくものです。その時の大変さだけで介護に絶望することがありませんように心から祈ります。介護する家族の思いは同じです。