この記事でわかること
- ケアマネジャーが対応に苦慮する家族の具体的なパターン
- 現場が実際に取っている対策と、その限界
- 支援者が燃え尽きないために知っておくべきこと
この記事は、介護保険と障がい福祉の相談業務に30年携わった元支援専門員が、現場の実態をもとに解説しています。
ケアマネジャーが頭を抱える家族とは、どんな存在ですか?
熟練のケアマネジャーでさえ対応に苦慮するケースがあります。それは依存度の高い家族です。
具体的には2つのパターンに分かれます。
- 丸投げ型:判断や手配をすべてケアマネジャーに委ねるキーパーソン
- 無関心型:利用者本人に全く関心を持たない家族
どちらも、支援者側に予定外の膨大な時間と労力を強いる点で共通しています。
同居家族の丸投げ|「今日残業なので母のことお願いします」

今日残業になったので、母(父)のことお願いします。

え、どゆこと?!こんな時間からサービスの手配はむずかしいですよ。

緊急ですから、何とかしてくださいよ!
「いやいや、これは緊急とはいいませんからぁー!」
これ、結構あるんです。
「事業所さんも予定外の急なサービスは対応できません」と何度説明しても聞き入れてもらえない。有償の保険外サービスを提案しても「そんな費用は払えません」と一蹴される。
結果として困るのは、遅くまで食事もとれず放置される認知症の利用者本人です。
ケアマネジャーは自分の業務をすべて中断し、短時間で事業所探しの電話をかけ続けます。ようやく「〇時ごろ伺います」と返事がもらえたときの安堵と疲労感は、経験した人にしかわかりません。それでも対応不可能な場合は、結局無報酬でケアマネジャー自身が動くしかありません。冷蔵庫の中を見繕って食事を作ったり、自腹でお弁当を買って届けたりしながら。
別居家族の無関心|「明日から母がこちらに来ますのでサービスよろしくね」
これも、現場あるあるです。

明日から母(父)がこちらに遊びに来ますのでサービスよろしくね!

え、あした?ですか・・・
(ね!じゃないわよ~。他府県じゃない、もぉーー)心の声
介護保険サービスは行政単位で動いています。要介護認定を持っていれば他の地域でもサービスは使えますが、利用開始には必ず担当者会議が必要です。今日の明日で、見知らぬ地域の事業所にすぐ動いてもらうことはできません。
他府県への移動となれば、先方の行政・関係機関を調べ、現地のケアマネジャーに紹介を依頼し、情報提供などの事前連携が必要になります。
最も厄介なのは、一度対応してもらえると「やってもらえる」と学習してしまい、同じ要求を繰り返すことです。 このパターンの家族には、制度や手順への理解を求めることが難しく、自費対応も「費用が払えない」と断られるケースがほとんどです。
他府県に移動する場合も同じ。先方の行政や関係機関を調べて、サービス事業所をさがしてもらうなりしなくてはならないわけで。それ以前に担当者会議に出向くことができない距離だと、その土地のケアマネジャーから紹介をもらわなくてはならず、情報提供やらなにやらの事前連携を要するのです。
こういう方々はそのあたりの理解が望めず、自費対応も不可能な場合が多いので、支援側としては対応策を考えてしまいます。
現場が実際に取っている対策
対応策を何も持たずにいると、毎回ゼロから動くことになります。経験を積んだケアマネジャーは、こうした家族のケースに備えてあらかじめプランに手を打っておきます。
① 訪問介護事業所を2社導入しておく 通常は1事業所ですが、「利用者家族への説明を継続しているが理解に時間がかかるため、その間の利用者保全のため」などの理由を明記すれば、例外として認められる場合があります。ただし、判断は各行政によって異なります。
② 延長・夕食対応可能なデイサービスを設定しておく 急な残業などに備え、夕食まで対応できるデイサービスをプランに組み込んでおきます。
③ お泊りデイサービスを用意しておく どうにもならない場合の最終手段として、緊急宿泊が可能な事業所を把握しておくことが重要です。
④ 小規模多機能型居宅介護の検討 本来であれば、こうしたケースには**小規模多機能型居宅介護(通称:ショウタキ)**が最も適しています。通い・訪問・泊まりを柔軟に組み合わせられるからです。ただし費用が割高になること、担当ケアマネジャーの変更が必要になることなど、移行のハードルがあるのも現実です。
👉 小規模多機能型居宅介護利用については詳細ページがありますのでご参照ください。
なぜケアマネジャーは断れないのか?
本音を言えば、利用者本人を放置できないからです。
家族がどれだけ無責任でも、困るのは利用者本人です。支援者はそれをわかっているから動く。そしてその構造を、家族側も無意識に読んでいます。
「絶対に利用者を見捨てない」という使命感が、結果として本来業務以外の仕事を際限なく拡大させていくのです。心優しいケアマネジャーほど、便利屋のように扱われていく構造がそこにあります。
支援者として、どう折り合いをつけるか
家族にも、それぞれの事情があります。仕事、家庭、経済的な制約。すべてを理解することはできなくても、含んで対処していくこともケアマネジャーの役割のひとつです。
現場で長く続けているケアマネジャーには、こうしたストレスを使命感や達成感に変えていくポジティブな仕事の仕方をする人が多くいます。簡単なことではありませんが、その姿勢が燃え尽きを防ぐ鍵になります。
まとめ|ケアマネジャーが困る家族への対応ポイント
丸投げ型・無関心型の家族は、支援者に予定外の膨大な時間と労力を強いる
対策として複数事業所の導入・延長対応デイ・お泊りデイをあらかじめプランに組んでおく
本来は小規模多機能型居宅介護が適しているが、移行にはハードルがある
支援者が動き続けられるのは「利用者を放置できない」使命感から。その構造を自覚した上で、自分を守ることも大切です
互いにもう一歩、理解と努力を重ねることで、利用者本人の生活の質はもっと上げられる。30年の現場経験から、そう確信しています。

