医者に介護の愚痴を訴えすぎたら薬が増えるだけ

介護の知恵
*本サイトには広告が含まれます

認知症を介護している家族が気をつけること

医療度の高い方を在宅で介護する場合には、気を付けないと症状を悪化させることがある。

医療度が高いとはどういうことでしょう

医療度と介護度を混同する人が多くいますが、これは基本的に分けて考えていきましょう。
病気を多く抱えていても比較的日常生活の自立度が高い方が居られる一方で、特に重篤な病気はないけれど、高齢や障害で身の回りのことが自分で出来ない方が居られます。

これについては認定調査編で具体的な考え方や、対応について説明していますのでご覧ください。

ここでは病気を抱えており、定期の訪問診療及び訪問看護・リハビリなどの医療管理を必要とする方を対象としてお話ししたいと思います。


その中で、重度の病気をかかえて身体の不自由はあるものの意識はしっかりしていて自分の意思をきちんと伝えられる人と、認知症の症状があり、身体的には問題ないが判断能力が低下し自分の意思が伝達できない人が居られます。


この場合、気を付ける必要があるのは後者の方です。
重度の認知症状があり身体能力が保たれている方についてはご家族の苦労はいかばかりかとお察ししますが、ご家族も専門職も含めて介護をするうえでとくに注意と冷静な判断を要します。

おそらく、退院後の不安定な状態であったり、ご家族の希望及びCMの調整により、在宅診療の医師が週に一度以上訪問することが考えられます。状態に応じて訪問看護やリハビリを併用する場合もあるでしょう。

進行中の認知症の場合も訪問診療が対象になるケースは多く、刻々と状態が変化する対象者に、ご家族のストレスが過剰になり多様な問題を引き起こす場合も考慮し、ご家族のメンタル管理も視野に入れて医療と介護が連携してサービスを行っていきます。

訪問診療の先生方は外来の医師に比べ、権威的なところがなく話しやすくあたたかい雰囲気を持った方が多く見受けられます。常日頃からご本人やご家族の身近で、気持ちに寄り添っておられるからでしょう。そこでやさしい気持ちからゆえの問題が生じることがあるのです。

認知症の患者でも往診に来てもらえるの?

「はい、来てもらえます」


訪問診療が出来るのは通院が困難という条件なので、認知症の方は、理解して定期に通院できる状況ではありませんので往診が可能です。
ただ訪問診療では専門科に関わらず往診し精神薬の一部をのぞいては処方することが出来るので、認知症の場合は専門医(精神科など)を探してもらったほうが良いでしょう。

例えば、認知症の高齢の妻を夫がみているとしましょう。
認知症はかなり重度で被害妄想も強く、暴言暴力もあります。ときどき家族の認識を忘れ、夜間覚せいしては大声を出し、興奮したら食事も摂らず栄養も偏ってきました。
いつの間にか玄関を抜け出ては徘徊し、近所の人とトラブルを招きます。
当然、毎日の介護生活で、心身共に高齢の夫は疲弊しきっています。

さて、夫が往診に来てくれた先生にあるいは専門職の介護者に、日々の惨状をとくとくと訴えることは想像がつきますね。
「妻から目が離せず四六時中気の休まる時がありません」「夜中に起きて外へ行くのではと心配でほとんど眠ることが出来ません」「あまり言うことを聞かない時は手をあげてしまいそうです」などなど。

専門職もまた、「このままではご主人のほうが心配です」「興奮が強くて。穏やかにしてあげられないものでしょうか」などの相談を医師にもちかけるかもしれません。

介護者を楽にする方法

そうすると、心優しき医師は少しでも介護者の負担を軽減するべく、身体能力がトーンダウンする薬を処方してしまうのです。
傾眠剤であったり、場合によってはメジャーな精神薬が投薬されることもあるのです。

介護者を楽にする魔法はありません。

精神薬の連続投与で体が動かなくなったり、発語が出来なくなったり、常時失禁や流延状態になるなどの副作用を多く見てきました。

薬の怖さは、確かに一時的に介護者の負担は軽減されるかもしれませんが、その人らしさは失われ人間の尊厳を無くしてしまうことです。そして結局はもっと大変な介護状態を生んでしまいます。

このケースでも、失禁の頻度が高くなり歩行もおぼつかなくなって、ついに夫は音をあげ妻を入院させることになりました。

精神薬の副作用を理解して上手につきあおう

病院では一旦全部の薬を抜かれました。数日激しい不穏が続いたようですが次第に状態は安定し、機嫌のよい時に見せていた笑顔を、再び夫に見せるようになったのです。


そこで家族も大変な状況を作っていたのは薬の副作用だったことに気が付きます。
やがて言葉も聞き取れるようになり、認知症は消えないものの意思伝達が出来るようになり、体も元のように動かせるようになってきました。

彼女は心身の安定後、施設に移行していきましたが、このケースは在宅診療の背景でわりと見受けられるものです。

いちがいに医師を責めることではないと思っています。

介護者の負担をとるのか、患者の自由をとるのかの選択を迫られるのです。
良心的な医師たちは、投薬した場合の副作用についてきちんと説明をしてくれるはずです。
重度の認知症で選択や意思表示が出来ない場合、それを決めるのはご家族になります。
憔悴した介護者を見かねて、専門職も「興奮が強いとご本人も辛いですからね」などと薬に頼る方向を示唆してしまう。
やさしさにつつまれた、実は恐ろしい究極の選択にほかなりません。

それでも、介護者にしたって燃え尽きるわけにはいきませんから、信頼できる医師と十二分に検討して必要最小限の処方にしてもらいましょう。
くれぐれもご自分の後悔にならないように慎重なご判断を。

医師にはあまり訴えるものではありません。やさしい先生の診断の目がくもらないように。
医師には正確に報告し、相談をするものです。

薬は的確に使うことで効果をもたらしますが、過ぎたるは及ばざるがごとし、毒に変わることを念頭に上手に利用したいものです。

施設数No.1老人ホーム検索サイト みんなの介護